都心からのアクセスも良く、海と山の豊かな自然に恵まれた千葉県房総エリア。
「ここで週末は家庭菜園を楽しみ、子どもをのびのびと育てたい」そんな憧れを抱いて、多くの方が移住や二拠点生活を検討されています。
しかし、その豊かな自然は、ときとして私たちに大きな試練を与えることも。特に近年は気候変動の影響もあり、毎年のように全国各地で豪雨災害が発生しています。
例えば、令和元年房総半島台風(台風15号)では、千葉県内でも甚大な被害が出ました。
「憧れの田舎暮らしを始めたい。でも、災害は怖い…」
そうした漠然とした不安を、具体的な備えに変え、安心して暮らせる土地・家を選ぶために欠かせないものがハザードマップです。
2020年8月からは、不動産取引の際にハザードマップにおける物件所在地の説明が義務化されました。これは、それだけ安全な土地選びにおいてハザードマップの重要性が増している証拠です。
今回は、千葉県房総エリアで数多くの物件を取り扱ってきた私たち東栄建設が、プロの視点から、土地や家を購入する前に必ず確認していただきたいハザードマップの読み方やチェックポイントを徹底的にわかりやすくお伝えします。
この記事を読めば、災害のリスクを把握した上で、不動産を購入できるようになります。ぜひ最後までお読みください。
目次
千葉県房総エリアの主な災害リスク

房総半島は三方を海に囲まれ、内陸部には房総丘陵が広がるという地理的特徴を持ちます。そこから考えられる災害のリスクを理解しておきましょう。
まず、台風の通り道になりやすい千葉県では、短時間に猛烈な雨が降ることによる河川の増水・氾濫のリスクがあります。特に、大きな川の周辺や、複数の川が合流する地点は注意が必要です。
また、見落としがちなのが「内水氾濫(ないすいはんらん)」です。これは、大雨によって排水路や下水道が処理能力を超え、マンホールなどから水が溢れ出す現象です。
川から離れた場所でも、周辺より土地が低い「窪地」や「谷地」では発生しやすいため、地形の確認が重要になります。
そして房総丘陵をはじめ、山地が多いエリアでは、大雨によって地盤が緩み、土砂災害が発生するリスクがあります。土砂災害は主に3つの種類に分けられます。
●がけ崩れ:斜面が突然崩れ落ちる現象。崩壊のスピードが速く、人家の近くで発生すると逃げ遅れる危険性が高い災害です。
●土石流:山腹や川底の石や土砂が、長雨や集中豪雨によって水と混じり合い、一気に下流へと押し流される現象。破壊力が大きく、広範囲に被害が及ぶことがあります。
●地すべり:比較的ゆるやかな斜面が、地下水の影響などで広範囲にわたってゆっくりと動き出す現象。一度に広範囲が動くため、家や田畑、道路などに大きな被害をもたらします。
太平洋と東京湾に面した房総半島では、海の災害にも備える必要があります。
●津波:大きな地震が発生した際に、海底の変動によって引き起こされる巨大な波です。特に太平洋側の外房エリアでは、南海トラフ巨大地震などを想定した津波リスクを正しく認識しておくことが不可欠です。
●高潮:台風や発達した低気圧が通過する際に、気圧の低下による海面の吸い上げと、強い風による海水の吹き寄せによって、海面が異常に上昇する現象です。満潮の時刻と重なると、沿岸部の低い土地では浸水被害が拡大する恐れがあります。
これらのリスクが「どこで」「どの程度の規模で」起こりうるのか。それを地図上でわかりやすく示してくれるのが、ハザードマップです。
ハザードマップの読み方と入手方法

ハザードマップとは、自然災害による被害が想定される区域や、避難場所・避難経路などの防災情報を地図上に示したものです。
「洪水」「土砂災害」「津波」など、災害の種類ごとに作成されており、主に各市町村が「水防法」や「土砂災害防止法」といった法律に基づいて作成・公表しています。
重要なのは、これらのマップが「1000年に一度」といった、想定しうる最大規模の災害を前提に作られているところです。想定外をなくし、最悪の事態に備えるためのものだとご理解ください。
ハザードマップは誰でも簡単に入手・閲覧することができます。
●各市町村のホームページで確認する:最も基本的な方法です。お住まいを検討している「〇〇市 ハザードマップ」と検索すれば、市役所の防災関連ページが見つかります。PDF形式で公開されていることが多く、ダウンロードしてじっくり確認することができます。
●国土交通省「ハザードマップポータルサイト」で確認する:全国のハザードマップ情報を集約した非常に便利なサイトです。「重ねるハザードマップ」という機能を使えば、洪水、土砂災害、津波といった異なる種類の災害リスクを一枚の地図上で重ねて表示できます。住所を入力するだけで、その場所のリスクが一目でわかるため、複数のエリアを比較検討する際に大変役立ちます。
ハザードマップの重要チェックポイント

ハザードマップを手に入れたら、購入を検討している不動産の場所と照らし合わせて、これから紹介する重要ポイントを確認していきましょう。
洪水ハザードマップ:浸水深(浸水の深さ)と浸水継続時間
河川が氾濫した場合に、どれくらいの深さまで浸水する可能性があるかが色分けされています。
●0.5m未満(黄緑色など):大人の膝まで。床下浸水の目安。
●0.5m~3.0m(黄色~ピンク色など):1階の天井まで。床上浸水となり、木造家屋では倒壊の危険も。
●3.0m以上(赤色~紫色など):2階の軒下以上。建物の倒壊リスクが非常に高い。
「床上浸水」の目安となる0.5mが一つの大きな境界線です。
また、マップによっては「浸水継続時間」が示されている場合もあります。水が引くまでに数日から1週間以上かかるエリアでは、避難生活が長期化する可能性も考慮する必要があります。
土砂災害ハザードマップ:「イエローゾーン」と「レッドゾーン」
土砂災害のリスクがある区域は、2種類の色で示されています。これは単なる危険度の違いだけでなく、法的な規制も関わる重要な区分です。
●土砂災害警戒区域(イエローゾーン):土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生じる恐れがあると認められる区域です。市町村は、この区域の住民に対して警戒避難体制を特に整備する義務があります。
●土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン):イエローゾーンの中でも、建築物に損壊が生じ、住民の生命または身体に著しい危害が生じる恐れがあると認められる区域です。この区域では、住宅等の特定の開発行為には許可が必要となり、建築物の構造にも規制がかかります。
特に、レッドゾーンに指定されている土地は、資産価値や建築の自由度に大きく影響を与えるため、必ず確認しましょう。
「緊急避難場所」と「避難所」の違いを理解する
マップ上には、避難するための場所が記号で示されていますが、2つの種類があることをご存じでしょうか。
●指定緊急避難場所:命を守るために緊急的に逃げ込む場所です。洪水や津波、土砂災害など、災害の種類ごとに安全な場所(高台、公園、頑丈な建物の高層階など)が指定されています。
●指定避難所:災害が収まるまで滞在したり、家屋が被災して戻れなくなった人が一時的に生活したりする場所です。主に地域の小中学校の体育館などが指定されています。
まずは、災害が迫った時にどこへ逃げるべきか「指定緊急避難場所」を確認することが最優先です。
安全な避難経路を複数シミュレーションする
自宅から避難場所までのルートを確認する際は、単に最短距離を見るだけでは不十分です。
●川や用水路沿いの道は避ける
●アンダーパス(線路や道路の下をくぐる道)は冠水しやすいので避ける
●崖の下や古いブロック塀のそばは通らない
●夜間や大雨で視界が悪い状況でも安全か確認する
こうした危険箇所を避け、安全なルートを複数考えておくことが重要です。
できれば、天気の良い日に実際に歩いてみて、危険な箇所がないか自分の目で確かめておくことを強くおすすめします。
災害リスクを正しく理解し、安全に楽しく暮らそう

ハザードマップで色が塗られている土地が、一概に「購入してはいけない危険な土地」というわけではありません。
大切なのは、「どのような災害のリスクが」「どの程度あるのか」を事前に正しく理解し、そのリスクを許容した上で、適切な対策を講じることです。
例えば、浸水リスクがあるエリアでも、基礎を高くする「高床式」の家を建てたり、盛土をして敷地全体を高くしたりすることで、被害を軽減することは可能です。
また、万が一に備えて、火災保険に水災補償をしっかりと付けることも有効な対策です。
リスクがゼロの土地を探すことは、現実的には非常に困難です。だからこそ、ハザードマップという客観的なデータを活用し、ご自身の家族構成やライフプランと照らし合わせながら、「どこまでのリスクなら許容できるか」を考えるプロセスが、後悔しない土地・家選びには不可欠です。
私たち東栄建設では、不動産をご案内する際に、その土地の歴史や地形、過去の状況、ご近所の評判といった、地域に根差した不動産会社ならではの情報も踏まえた上で、お客様一人ひとりの安全な暮らしづくりを全力でサポートいたします。
土地選びや物件選びで少しでもご不安な点がございましたら、どんな些細なことでも結構です。どうぞお気軽に私たちにご相談ください。
>>千葉・房総の田舎暮らし不動産情報専門店「東栄建設株式会社」に相談する
この記事を書いた人

奈良県生まれ京都府育ち。2014年10月からフリーランスのライター・編集者。東京で働いていたこともあったが、ゆったりした暮らしをしたくて地方移住。テレビ番組「住人十色」が好き。将来は平屋に住みたい夢がある。




